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コンサルタントコラム -

「大介護時代の従業員支援策」
第4章:仕事と介護の両立に向けて~実際の相談事例から~

ピースマインド・イープ(株) EAPコンサルタント/国際EAP研究センター主任研究員 中村 洸太 

2015年10月19日 企業と社員のワーク&ライフ

中村 洸太(なかむらこうた)

ピースマインド・イープ(株) EAPコンサルタント/国際EAP研究センター主任研究員


青山学院大学文学部心理学科卒業後、Alliant International University / California School of Professional Psychology にて修士号獲得。東京大学大学院総合文化研究科研究生を経て現職。セクシャルマイノリティのメンタルヘルス研究、実践を行う傍ら、心療内科・精神科クリニックや大学病院での高次脳機能障害や高齢者の認知機能の検査・研究、国立大学や都立高校における相談室勤務など経験。現在、同社において、臨床、研究、開発、研修など幅広い分野での活動を行う。


 本章では、実際に仕事と介護の両立について当社に寄せられた相談事例を紹介するとともに、事例からうかがえる従業員が抱えやすい悩みや両立のポイントをまとめていきます。今回は3 人の従業員の仕事と介護の両立事例を紹介します(個人情報保護の観点から、実際の相談事例を一部改変しています)。

事例1 :両親が突然要介護状態になり、負担が増大したことで心身の不調を来した独身従業員のケース

 ● 相談者の家族構成と状況
 従業員Aさんは40代独身男性です。正社員で両親と3 人暮らしです。同居する70代の母が数ヵ月前に足を骨折し、車いす生活になったことをきっかけに、これまで母が担っていた家事全般をAさんが引き受けることになりました。

 ● 相談に至った経緯 
 これまで母が担っていた家事全般をAさんが負担することになり、自分の趣味などに費やしていた休日の時間も、家族とつきっきりになることが増え、次第に疲労感を覚えるようになっていきました。母の車いす生活が長くなるにつれて、母の体力も低下し自身で身の回りのことをするのも困難となったため、公共の介護サービスの利用を考えましたが、当初は父が同居していたこともあって「家族で介護ができる環境」とみなされ、利用ができませんでした。また、認定は受けていないものの、父に認知症の傾向がみられるようになり、父にも介護や家事を任せることが難しくなり、さらにAさんの負担が増大していきました。自身でも現状に悩み、有料の介護サービスを検討したものの、経済的負担から断念せざるをえず、仕事上のキャリアでは昇進の機会と重なったため、上司や同僚、産業保健スタッフにも現状の困難さをなかなか言い出せず、ようやく社外の窓口に相談することにしました。

 ● その後の経過
 Aさんは、誰にも言えない状況を吐き出せたことで、まずは非常に安堵しました。このまま誰にも相談できず、 1 人で頑張り続けることに不安と限界を感じていましたが、話すだけでかなり落ちつくことができました。 Aさん自身は、睡眠時間の減少や食欲の低下、集中力の低下、疲労感が取れないなど、心身ともに不調を感じていました。相談に応じてくれたコンサルタントからは、「上司や人事、産業保健スタッフと相談してみましょう」と言われ、思い切って上司に相談してみようと決意ができました。コンサルタントが相談の切り出し方などのヒントをくれ、後押ししてくれたように思えました。

 また、日中は仕事で時間が取れないAさんの代わりに、コンサルタントが地域包括支援センターの担当ケアマネジャーに連絡し、現在のAさんの両親の介護状況について、再度介護認定の判定を依頼してくれました。

 上司がAさんの現状を理解し、日頃から体調や介護の状況について声掛けを意識したことにより、Aさんは職場に自分の現状を理解してくれる存在がいることに大きな安心感を覚えるようになりました。また、上司が人事部につないでくれたことで、社内の休暇・休業制度などについての情報も受けることができました。その後もコンサルタントとは、仕事と介護の両立を図るセルフマネジメントについて検討をしていきました。両親は介護認定を受けることができ、公共の介護サービスを利用しながらAさんは仕事と介護の両立を続けています。

事例2 :家族や兄弟の協力を得ることが難しく、同居していない両親の介護を一人で担った従業員のケース

 ● 相談者の家族構成と状況
 従業員Bさんは、50代既婚男性です。正社員で妻と2 人の子供と同居しています。実家はBさんの住居と同じ市内にあり、車で40分程度のところに父母が2 人で暮らしています。Bさんの実兄は県外に住んでいます。

 2年前に76歳の母が脳梗塞で倒れ、左手足が動かなくなりました。要介護4 の判定を受けましたが、リハビリの甲斐もあり要介護2 まで改善しました。80歳の父は昔堅気の性格で他人を自宅に入れたがらず、そのためヘルパーも頻繁に頼むことが難しく、実家の買い物や身の回りの世話はBさんが行っていました。

 ● 相談に至った経緯
 Bさんは、実家の両親のために会社を休むことが多くなっていきました。さらに、Bさんは、母が倒れた直後に異動となり、通勤に片道2 時間をかけていましたが、心配性で優しい性格のため、毎日帰宅後には車で実家に様子を見に行っていました。

 Bさんは、職場では管理職を担っており、業務も難しい部署であったため周囲への負い目なども感じ、土日出勤をしながら仕事をこなすような日々が続いていました。

 そのような状況が続いたため、Bさんは、徐々に身体の不調を感じるようになってきました。ほぼ毎日眠りが浅く、頭が重い、めまいがする、何事にも集中できない、という症状を自覚するようになってきました。特に、チーム内の同僚や部下からはどこか距離を置かれているような気がして焦りを感じていました。

 Bさんは、上司や人事に事情を伝え、自宅から通勤しやすい部署への異動希望を出しましたが、すぐに配属できるような部署がないとの理由で異動は保留になっていました。異動時期の年度末まで待つことができず、介護と身体の不調もあるため、退職したい旨を上司に相談したところ、上司から社外の窓口を紹介され、相談に至りました。

 ● その後の経過
 Bさんは、家族の介護や通勤・業務の負担もあるなか、自身に負担が集中し、長期にわたる心身への負荷の増大を感じていました。相談しても何も解決しないと思っていましたが、担当のコンサルタントに、「かなりお疲れのご様子ですね。ご両親の介護も重要ですが、Bさんご自身が倒れてしまっては、ご両親の面倒をみてさしあげられなくなりますね」と促され、Bさん自身の体調を整えるために医療機関を受診することとなりました。

 また、仕事も介護もしっかりやろうと一生懸命に取り組んでいたBさんは、改めて今回の状況について振り返り、 1 人で抱え込んでしまっていたことにも気がつきました。すべて1 人で抱え込もうとすると無理が生じることを強く実感し、上司とともに職場全体の業務分担などについて見直すことになりました。部下と話をするなかで、部下もどのようにBさんに声をかけていいのか分からず困惑していたことも把握でき、部署内でお互いのサポートの仕方を考えていくことになりました。

 プライベートでも同様に、Bさんは兄や妻には迷惑をかけてはいけないと考えていましたが、これを機に少しずつ協力を依頼できるようになりました。また、コンサルタントから非同居介護で利用できるサービスや資源をまとめて紹介してもらい、家族のライフスタイルに合ったサービスを利用しながら、仕事と介護の両立を実現しています。

事例3 :妻が難病に罹患し症状が次第に悪化していく中で、日常生活に困難を来し始めた従業員のケース

 ● 相談者の家族構成と状況
 従業員Cさんは50代既婚男性です。正社員で妻と2 人の子供と同居しています。妻が難病に罹患し、入院加療でも症状はあまり改善されず、退院後も妻1 人で通院することが難しい状況となり、必ずCさんが病院に同行することになりました。その後、妻は日常生活にも困難を来すこととなり、 1 日の大半を横になって過ごす状態となりました。

 ● 相談に至った経緯
 妻の状態が悪くなる一方で、Cさんの仕事も繁忙期に差しかかっていました。これまでは高校生と中学生の息子たちと家事を分担していましたが、今後はそれも難しくなることが予測されました。また、妻の主治医からは障害認定や介護認定の制度の利用を勧められましたが、そもそもどうしたらよいかが分からず、八方ふさがりの状態で、人事から定期的に案内される社外相談窓口の案内があったことを思い出し、情報を求めて相談に至りました。

 ● その後の経過
 Cさんは、利用できる社会資源の情報を強く求めており、担当のコンサルタントから地域で利用できるサービスや資源を紹介してもらいました。コンサルタントは、妻の症状の様子を見ながら障害認定から地域の資源提供までサポートができるような環境を整えてくれました。同時に、民間の障害福祉サービスやハウスクリーニングや家事代行などのサービスの情報を提供してもらいました。また、社内の休暇・休業制度などについては、高齢者介護以外でも利用できることをCさんは知らなかったため、コンサルタントが人事と連携を取り、利用できる社内の制度を人事から伝えてもらいました。

 同時に、Cさんの事例をきっかけに、社内でも介護制度の存在が十分に周知されていない可能性が考えられたため、人事が介護や看護にまつわる知識や対応のコツについて社内研修を定期的に実施したり、情報発信を行ったりする取り組みも開始されました。Cさんの妻の状況は平衡状態ではあるものの、Cさん自身は負担が軽減されたことで、以前より妻に対して優しくなれる余裕が生まれてきたといいます。

ポイント:仕事と介護の両立のためには?

 以上の3 つの事例でも明らかな通り、介護は1 人で抱え込まないことが大切です。1 人で抱え込んでしまい身体の負担が増大してくると、心の余裕も失いがちになります。その結果、介護でも仕事でもミスやトラブルが起きやすくなり、さらにイライラ感が募るなど、負のスパイラルに陥ってしまい、「仕事を辞めざるをえない」という閉塞感にとらわれる人も少なくありません。介護について周囲にオープンにすること自体に抵抗を感じる人も多いのですが、従業員が退職を選択をする前に、下記の5 つのポイントを意識しながら介護と仕事の両立を行うよう、人事担当者からの働きかけが有効です。

介護に関する5 つのポイント

 1.介護保険サービスなどを利用し、自分で介護をやり過ぎない
 2.必要に応じて勤務先の仕事と介護の両立支援制度を利用する
 3.可能な限り同僚や家族の協力体制を整えるようにする
 4.自分の感情を抑え込まないで、吐き出せる存在や場を作る
 5.自分のための時間を確保する

 家族や大切な人の介護は誰もが直面する可能性があります。1 人で問題を抱え込んで業務に支障を来し続けるよりも、介護の事情を周囲に伝えながら仕事を続けたほうが長い目で見たときに従業員自身も良い方向に向かうことが多いようです。介護をしながら働くことができる職場は、結果としては働きやすい職場であるともいえるでしょう。

(『月刊 人事マネジメント』 2015年8月号 掲載)

「仕事以外の生活上の悩みが仕事に影響を及ぼしている」という従業員は約8割存在します!

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これまでは、職場における社員の仕事とプライベートな生活とは切り離して考えられてきました。しかし、昨今では社員のプライベートな生活(ライフ)の充実が、職場での生産性や成果の向上にプラスの影響を与えていることが指摘されています。本コラムでは、社員のワーク(仕事)とライフ(プライベート)を企業がどのようにサポートすることができるのか、そのヒントについて解説します。

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