セミナー&トピックス

コンサルタントコラム -

「大介護時代の従業員支援策」
第3章:従業員が活用できる介護の相談窓口と有効な利用法

ピースマインド・イープ(株) ジュニア・コンサルタント 大城戸 忍 

2015年10月5日 企業と社員のワーク&ライフ

大城戸 忍(おおきどしのぶ)

ピースマインド・イープ(株) ジュニア・コンサルタント


早稲田大学国際教養学部卒、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修士課程修了。ノルウェー・ベルゲン大学にて福祉制度、ワークライフバランスを学ぶ。帰国後、NPO法人ファザーリングャパンにてインターンとして日本の子育て事情を学びながら、働く人のワークライフバランスを研究。一昨年、自身も介護を経験し父を看取る。現在、同社ジュニア・コンサルタントとして企業の従業員支援を行う。 


 第2章では、具体的な人事施策についてご紹介しました。人事施策や制度を工夫することで、働く人々の支援に役立つ基礎ができあがるため、これらのハード面の整備には非常に大きな意味があります。職業柄、私たちは様々な企業や組織の人事担当者と打ち合わせをする機会が多くありますが、「従業員の介護に関する人事施策は整えたのだが、実際に活用できているのか、役に立っているのか把握できていない」というお話をよく耳にします。これらの話からは、ハード面は充実させてきたが、このままでよいのか、次に打つ手が分からない、という人事担当者の迷いが表れているように思います。

 介護は個別性の高い問題であり、従業員はただ介護に関する情報を聞いたり、制度があることを知ったりするだけでは、自身の状況に合わせた具体的な打ち手が見えず、不安になることもあります。本章では、人事担当者が従業員に提供できる相談窓口の種類と、その有効な利用方法をご紹介します。

管理者(上司、人事)が窓口

 働きながら介護をする従業員にとって上司や人事への相談は、仕事量の調整などが必要となるため早期に行われるべきです。近年、介護をする従業員の増加に伴い、会社に介護をしている事実を伝えることに、以前ほど抵抗感を持つ人は減っているようですが、従業員の置かれた状況や組織の文化などにより、相談できない従業員が多く存在しているのも事実です。また、社内で利用できる人事制度を照会したり、上司や人事と相談のうえ、働き方を一時的に変えようとしたりする従業員は未だ少ないという現状があります。「介護をしている現状報告」はできるが、「働き方を変える相談」ができないでいる状況を変えていくには、どのような策が有効でしょうか。

 まず、制度面では(介護だけでなくワークライフバランス支援全般にいえることですが)、意識の啓発と両立施策の社内周知が非常に重要です。例えば、次のような施策を行うことで、働き方の相談をする不安は軽減され、介護と仕事の両立を助けます。

 1. 人事制度について従業員が照会しやすい仕組みを整える
 2. 介護で働き方を変えると人事評価にどのように影響を及ぼすのか、詳しく知ることができる資料を公開する
 3. イントラネットや社内メール、社内報などを利用して社内制度の情報を掲示・配信する
 4. 労働組合を通じて介護や子育てなどのワークライフバランスについて啓発する
 5. 社内セミナーの実施やパンフレットなどのコミュニケーションツールを使ってアピールする
 6. 人事部内に専門の相談窓口を設置する

 職場の管理職や人事担当者が実際に従業員から相談を受けた場合、社内制度だけでなく介護に関する諸制度についてもある程度の説明ができるとよいでしょう。しかし、かなり複雑な制度となっているため、管理職や人事担当者自身も専門家に相談したり、コンサルテーションを受けたりできる外部の相談窓口を準備しておくのも良策といえます。

 また、相談しやすい風土の醸成という観点から考えると、職場でのコミュニケーションの活性化が求められます。例えば、自分の部下に介護問題が発生した際に、上司が「彼の奥さんは専業主婦だと聞いているから、本人が介護休暇や休業を取らなくても大丈夫だろう」などと早合点すると、部下からの信頼を損ね、生産性の低下や離職につながりかねません。また、介護中の従業員の状況を考慮しすぎ業務範囲を極度に限定するような過剰な対応をとると、かえって仕事の習熟の機会や意欲を低下させる原因にもなるでしょう。上司や人事は、本人の事情を従業員の立場から理解する必要があります。管理職と従業員の双方向のコミュニケーションを円滑化させるには、傾聴やアサーションなどのスキルを高めることも有効です。


ケアマネジャーが窓口

 現状の制度では、ケアマネジャーが介護全般の相談窓口となります。厚生労働省の調査(*6)によると、介護の相談先として、ケアマネジャーは家族・親族の次によく相談する相手となっています。介護認定の具体的な説明や手続き、介護施設やサービスの照会、さらには介護をするうえでの心理的、身体的な苦痛についてなど、あらゆる相談ができる相手です。働きながら限られた時間で介護を行う場合には、複数の窓口に問い合わせることができず、ケアマネジャーの勧めや、周囲の知りうる知識によって決断を下すことが少なくありません。

 ケアマネジャーは介護者の要望や地域のリソースを熟知しているのですが、介護者の仕事や会社でのサポート、労働契約上で介護の際に取得できる休暇制度など、働く介護者を手助けする知識については個人的な経験による部分が大きく、体系的なサポート体制までは整えられていません。例えば、「会社を休めないのでどうしようもない」とフルタイムの仕事を持つ介護者から相談を受けた場合に、「会社に介護休暇制度があるかどうか、人事の方に問い合わせてはいかがですか」といった助言ができないケースが多々あります。

 ケアマネジャーは介護をするうえで、非常に重要な役割を果たしているといえますが、体系的なサポート体制が整えられていないがゆえに、人によって対応にばらつきがあるのも事実です。一度相談したら、他のケアマネジャーには相談できないと思い込んだり、ケアマネジャーという専門職にどう接してよいのか分からない、状況を伝えきれていないという介護者もいます。従って、ケアマネジャーへのコミュニケーションの取り方や情報の伝え方のアドバイスを受けることができるとよいでしょう。

 ケアマネジャーには「介護のプロ」として相談をし、仕事と介護の両立や専門家との接し方等については、別の相談窓口を確保しておくのが理想的です。企業の人事担当者が従業員に介護情報を提供する際には、ケアマネジャーに相談すべきことと、上司や人事担当者に相談すべきことを整理し、仕事と介護の両立については会社へ相談するよう促すことが重要です。

外部機関の相談窓口

 介護は突然始まる場合が多く、いつ終わるかの予測もつきません。突然始まるため、介護者の準備や、心構えが不十分であることが多々あります。また、想定外のことが多く起こり、介護者は自分自身のケアを忘れがちな状態に陥ります。また、働きながら介護をする従業員にとって、置かれた状況を理解してくれる存在を見つけることは難しく、孤独感にさいなまれる場合も少なくありません。

 介護者となった本人のケアのためにも、外部機関の相談窓口を確保しておき、連携を取りながら従業員をサポートすることは不可欠です。会社で外部相談窓口を設置している場合には、サービス内容に介護の相談が含まれているか、ぜひ確認してください。また、従業員の生活面を支援するための情報提供サービスの導入がグローバルにはスタンダードになってきており、現在、日本でも外資系企業を中心に進んできています。従業員の健康やメンタルケアに加え、介護やその他生活全般に関する幅広い情報を一度に効率よく得ることができ、具体的なアドバイスも受けることができるので、従業員の生活問題に対するストレス軽減に役立っています。

 しかしながら、働きながら介護をする従業員の生活は、仕事、介護、またその他のライフイベントで、企業内外に相談窓口があっても、「窓口に問い合わせる時間すらない」「問い合わせること自体に気がつかない」というケースもあります。タイトなスケジュールのなかで、どのように相談窓口の利用を促すのか、人事をはじめ、職場の関係者からのアドバイスも重要です。介護を理由に退職した後、「そのような制度を知っていたら、辞めなくても済んだかもしれない」という声もよく耳にします。諸制度は利用されて初めて制度として機能します。貴重な人材の流出を招く前に、人事担当者は現場の管理職と協力し、従業員に相談窓口の利用を促しながら、支援を行っていくことが効果的です。

 介護は子育てと違い、いつ手が離れるのか、いつ忙しくなるのか予測しにくいケアだといわれます。また“介護が終わる”とは大切な存在との離別を意味し、介護が終わってから心理的ストレスが思わぬ形で表面化することもあります。相談窓口の提供と継続的なコミュニケーションで、介護をする従業員の生産性を高く保ち、離職を食い止める施策を立てる必要があります。


*6:厚生労働省 仕事と介護の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書 平成24年

(『月刊 人事マネジメント』 2015年8月号 掲載)

「仕事以外の生活上の悩みが仕事に影響を及ぼしている」という従業員は約8割存在します!

仕事に影響するプライベートな課題を早期解決 「スマート・ワークライフ」

専門のトレーニングを受けた当社のワークライフ・スペシャリストが、相談者の個別のニーズを引き出し、
そのニーズに合致しかつ確実に利用可能な資源に関する情報を中立的な立場から提供します。

企業と社員のワーク&ライフ コラム一覧
企業と社員のワーク&ライフ

これまでは、職場における社員の仕事とプライベートな生活とは切り離して考えられてきました。しかし、昨今では社員のプライベートな生活(ライフ)の充実が、職場での生産性や成果の向上にプラスの影響を与えていることが指摘されています。本コラムでは、社員のワーク(仕事)とライフ(プライベート)を企業がどのようにサポートすることができるのか、そのヒントについて解説します。

最新記事
ピースマインド・イープのサービス

ピースマインド・イープは、高度な専門知識を活かしたメンタルヘルス関連サービスを通じて、お客様の抱える職場の問題解決と組織の成長を支援しております。

サービス概要

お問い合せ先

EAPについてのことやピースマインド・イープのサービスなどその他ご不明な点に関するご質問は、以下から気軽にお問い合わせください。スタッフが詳細な説明を行わせていただきます。

お問い合わせはこちら
お問い合わせはこちら 資料請求はこちら

トップへ